n1133 ソニーと握手
これからがひかるの真骨頂、腕の見せどころである。
オメガ方式は読んで字の如く、テープがヘッドを一回転していない。
勿論、左右のリールに段差、奥行きをつける必要もなく、平坦に出来る。
しかし、三十分テープがかかるからとて、一時間二時間のテープをかけ、早巻き戻しをし、30ぶんの1秒、フレーム単位で、ぴたり止めるのは、どうしてもうまくいかない。
それには、開発の時間がかかると言う事だ。
ひかるはまず、オメガ方式を開発している、ソニーの厚木工場へ飛んだ。
町工場のようなバラック立て、VTRが10台くらい並び、学生かと思われるような卒業したての若手、4、5人の開発者がいた。
「放送業界は今、アルファ方式に傾いているが、それでは絶対駄目だ。
その内、アメリカが、それに勝るVTRを投入、日本はまた、アメリカに利益を吸い上げられ続ける。
だから、どうしてもこのオメガ方式でなければ駄目だ。もし不採用になっても、今後も、開発をずっと続けて欲しい。
願わくば、これから急いで開発を早め、何とか逆転させる方法を考えよう」と、熱く説いたのである。